ウマの家畜化は幸運の産物?(3)

野生ウマを最初に家畜化したところは何処だろうか?

大人しそうなウマを手元に置き、エサをやりそして育てるということの利益を最初に真剣に考えたのは野生のウマたちのことをよく知って人たちにちがいない。かれらは野生ウマの狩猟やそれらの行動について学ぶことに多くの時間を掛けられた場所に住んでいたにちがいない。

世界中のなかでこのような場所はウマが好んだ氷河期のステップが北半球では鬱蒼した森に変わってしまった一万年から一万四千年の間(最後の氷河期の終わり:日本では縄文海進のころ)に著しく減少してしまった。北米のウマは理由がはっきりしない気候変動に従って絶滅し始めた。ヨーロッパやアジアでは野生ウマの大きな群れはそれより小さい集団をヨーロッパの開けた草原、そしてカフカス山脈と孤立した地域に点在させる形で残しつつ、大半がユーラシア大陸の中央にあるステップでのみ生きながらえたにすぎない状況になった。

中期完新世(紀元前5000年ごろ)における野性ウマの分布図
中期完新世(紀元前5000年ごろ)における野性ウマの分布図。数は各地域のヒトの台所ゴミ に含まれるウマの骨の近似的な頻度を示す。D.W. Anthony(2007)より。

ユーラシアのステップでは、野生ウマや関連する野生のウマ科の動物(オナガー(E. hydruntinus))は草原で草を食む動物の主流をなしていた。完新世の初期のステップの考古学遺跡(中石器時代または初期新石器時代)では野生ウマは動物の骨の40%以上が普通であり、ウマは大きく肉が豊富なのでウマは食肉の40%
以上を占めていた。この理由だけからでもウマの家畜化の最初のエピソード、現生の雄ウマの系統を説明するための出来事ではユーラシアステップを取り上げなければなるまい。