ウマの家畜化は幸運の産物?(4)

このシリーズでウマの家畜化について考えているが、今回はこの家畜化が何時ごろ起きたのであろうか?という問題である。

従来から遺跡から発掘されるウマの骨の統計的な性質(大きさのばらつき)からこの問題に接近しようとする研究があった。

大きさのばらつきによる方法は二つの仮定に立脚している:(1)家畜は保護されているので家畜化された動物の集団は大きさのばらつきがより大きくなり。おとなまで生き残った状態のばらつきもより大きくなる。つまり、変動の幅がより大きな集団になる。(2)囲い、運動の制限そして食料の制限は平均値を減少させるので、家畜化された動物の集団の大きさの平均値は全体として減少する。肢の骨の測定値(主として骨頭や骨幹の幅)がこのパターンの違いの検出するために用いられる。この方法はウシやヒツジの肢の骨では成功しているように思われる。つまり大きさのばらつきの増大そして大きさの平均値の減少は家畜化されたウシやヒツジを同定しているように見える。ウマの一例を示す。

家畜化されたウマを同定するための大きさのばらつき法。縦のひげ付きボックスは左に最古の遺跡(旧石器時代)を右に最も新らしい遺跡(後期青銅時代)の順序で並べた13個所の考古学遺跡から得られたウマの肢の骨の厚さを示している。ひげはサンプルの最大値と最小値を示していてサンプルの大きさによって影響を受けるので集団のばらつきとしては信頼性のないものである。白いボックスは平均からの二つの標準偏差でばらつきとしては信頼性が高く通常はこちらを使って議論する。バー10のばらつきが増大したことからウマの家畜化が始まった証拠と見なされている。

これによればウマの家畜化は紀元前2500年ごろ起きたと推定される。