輓馬(ばんば)の歌

新聞に詩稿「輓馬(ばんば)の歌」を書いた久保克彦の評伝の記事がのった。久保克彦は『図案対象』という作品を残した戦没画学生で未完の詩集「輓馬(ばんば)の歌」を遺した。

藤田嗣治が「右腕はお国に捧げるつもりで戦争画を描け」と言った時代に明確な反戦の意思を持った詩稿「輓馬(ばんば)の歌」を書いた。そこには数しれない輓馬の隊列が「怠惰な戦争の続いている/黄土の大陸の方へと進んで行く」と、ひとり馬にあらず全ては日中戦争に向っている状況への抗議となっている。

この25歳で戦死した久保克彦の『図案対象』は戦争の無意味さ、文明の脆さを象徴する作品となっている。この作品はかれの母校、芸大美術館が所蔵している。

評伝の著者は久保の甥である木村亨氏で「輓馬(ばんば)の歌 《図案対象》と戦没画学生・久保克彦の青春」(図書刊行会:2019)。