下馬戦闘

「わが馬、わが師」の中で、第一次世界大戦のロシア戦線で騎兵が馬を下りて徒歩で戦闘に参加したというエピソードを著者アロイス・ポジャイスキーは回想で述べている。騎兵は乗馬したまま戦闘に参加することはなかったする事実である。この事実は実に興味深い。乗馬を始めてみると、以前から日本の戦国時代にいた騎馬武士が馬に騎乗したまま刀や槍で白兵戦闘をしたのだろうかという疑問が湧いた。テンションが上がった馬を乗り回し、しかも刀や槍などの武器を振り回して戦う訳である。相当に訓練しないとできない武術である。このような武術を会得した騎兵を有効に戦闘に使うとするとある程度の人数を用意しなければならない。
以前のこのブログで戦国時代の最強と言われた武田騎馬軍団についてふれたが、全戦闘員の約一割が騎乗した武士であることを明らかにした。後の九割は馬をもたない歩兵である。この程度の騎乗武士が馬に乗って戦っても戦いの帰趨にはたいした影響はないようにおもう。馬の利用は部隊移動や情報伝達にあったと思われる。このようなとき騎馬武士は馬を下りて歩兵と同じような形態で戦闘をすることになる。 これを「下馬戦闘」という。
鈴木眞哉著「鉄砲隊と騎馬軍団」(洋泉社:2003)によればこの「下馬戦闘」は日本の南北朝あたりから一般的になり戦国時代にはごく普通の騎馬武士の戦闘形態になったそうである。馬は「馬囲い」という特別な場所にその戦闘の期間は管理されたとうことである。
また、鎌倉時代などでは馬に騎乗した武士が騎乗のまま戦闘に参加したらしいが、使った武器は刀や槍などの接近戦で使う武器でなく、弓など遠くからしかけられる武器を携行した騎馬武士が多く、騎乗したもの同士の白兵戦などは少なかったことをあきらかにしちる。騎乗した武士が鞍の上で安定を保ち馬も手綱なしでも走れるように訓練すれば、騎乗で弓を使うことは可能かなと思われる。